私が語りはじめた彼は

本書は一人の大学教授「村川 融(むらかわ とおる)」を中心に彼の妻、息子、弟子、娘など関係者の物語が紡がれていきます。

大学に送られた手紙を巡る「結晶」。
幸せな家庭に不意に訪れた影に悩む「残骸」。
父親に去られた息子がバイクで駆ける「予言」。
一人の女子大生を観察する「水葬」。
婚約者の義理の妹の死について探る「冷血」。
迷子の情報を手帳に記す青年との「家路」の六編からなり、彼を語る人々は愛に悩み、孤独を抱え、家族との関係に苦しんでいます。

この作品は一つに繋がっていますが、登場人物によって時間軸が異なっています。
また、結婚や離婚によって名字が変わる人もいるので、登場人物を思い浮かべるのに苦労する人もいるでしょう。
ですが、この複雑さが物語を簡単に終わらせないスパイスにもなっています。
事の発端になった「村上融」も不思議な魅力があり、物語を盛り上げます。
登場する男女には結婚、恋愛、夫婦、親子、恋人など様々な人間関係があり、それは決して平面ではありません。

静かですが、登場人物の感情が複雑に絡み合う小説が好きな人にはオススメです。

初版:2004年5月/新潮社
文庫版:2007年8月/新潮文庫

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